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桓武帝は今日も大変だ

 

周囲が大変な人ぞろいだと、本当に苦労する。

 

 

***

 

 

 

 桓武帝即位前のお話。

 

早良親王「なーなー安殿ちゃん」

安殿親王「・・・何ですか、叔父さん」

早良「お前ん父さん・・・俺ん兄さんてな、若い頃、母方のいとこに懸想してたことがあってんよ。知っとった?」

安殿「え・・・・・!!?あ、あの、父上が・・・・・?」

早良「せやよぉ。でも結局その娘ぉ、他の男んところに嫁に出されてしもうてなぁ。あん時の兄さんの消沈具合は・・・今思い出してもほんまに哀れで・・・」

安殿「へぇ、女性に心を動かされるようなことが父上にもあったんですね・・・・あ」

早良「意外やろ?俺もずっと東大寺でぼんさん(坊さん)しとったさかい、そないに兄さんの事、良く知っとる訳やないんやけど・・・・振られた直後は二日にいっぺんのいきでわざわざ俺んとこまで来おって、三月堂でひたすら祈ってはって・・・。子供ながらに13も年上の兄がそこまでになるって、一体どないな美人はんやったやろなぁ、って考えとったで」

安殿「あ、あの・・・・叔父上」

早良「んー?・・・・あっだっ・・・・・・!!!?兄さん!?いつの間ぁに!?」

桓武天皇「黙って聞いてれば良い気になりやがって、おい早良ッ!!」

早良「はいな!なんでっしゃろか!」

桓武「なんでっしゃろじゃねぇわ!俺の息子に何吹き込んでやがるッ」

早良「せやって、せやってなぁ、事実やしー!俺悪うないもん!」

桓武「お前が100%悪いだろ何開き直ってやがる!」

早良「痛ったた、ちょ、明らかに体格じゃ俺のが不利なんやけど!?せやのに絞め技掛けるって慈悲も何もあらひんやん!」

桓武「いつか、一度しっかり叱ってやんないといけないと思ってたんだ。丁度いい機会に恵まれたな」

早良「嫌や!離して!ってちょ、関節!関節技は、無しやっ、痛あああ!!」

安殿「・・・・父上が珍しくムキになってる」

桓武「ムキになんてなってねぇ!おい安殿、お前もこいつの言うことは信じたらいかんぞ!・・・にしても早良、相変わらず細いな。もう少し鍛えたらどうなんだ」

早良「兄さん!それ関節抜こうとしながら言う言葉やない!俺は細っこいくらいがええねん!それでこそ美貌の親王やろ!兄さんが十分にごついんやから、俺がこれくらいでないとしつこいわっ、いだだだ!!」

桓武「おっとまだまだ余裕があるみたいだなぁ。もう少しいくか」

早良「嫌やてゆうてんやん!・・・くそ、こうなったら苦肉の策や、この手で俺に敵うと思いはるなや兄さん!」

桓武「何だと・・・?」

早良「誰か・・・っ!!兄さんが、俺に無体働きはる・・・!!誰か、助けて・・・・!!!」

桓武「は・・・・おま、何言ってんだ、」

早良「嫌ぁ!!そんなとこ、嫌、触らんといて・・・・!!」

安殿「うわ・・・叔父上・・・・凄い演技力・・・」

桓武「安殿、感心するな!・・・っていうかおい、誰も来なくていい!悪いのは早良の方だ!・・・良継何ニヤニヤしてやがる!冷静に考えて関節技決めてるだけだって気づいてるよなお前なら!」

藤原良継「いやあ、なんだか面白そうなことやってるなぁって。あ、そうだ、百川も呼んでこようか。どうする山部親王、っと、お、また厄介なのが」

藤原蔵下麻呂「おーい兄さん、何やってんの?」

早良「蔵下麻呂・・・、あ、助けて・・・!安殿ちゃんもいるからダメや、っていうてんのに・・・兄さんが・・・!」

蔵下「え、お二人、うっそ・・・・・・ヨシ兄、ちょっと俺モモ兄呼んでくる」

桓武「蔵下麻呂行くな!もし行くんだったら今後昇進は無いと思え!永久に正5位で差し止めてやる!」

良継「あららー、次期天皇ともあろう人が臣下呪っちゃっていいんですかぁ?」

桓武「良継!その思いっきり確信犯なしたり顔やめろ!」

百川「何だ、騒々しいな・・・・・は・・ぁ・・?・・・山部親王、あんた一体何を・・・・!気が狂ったか・・・?」

桓武「百川ぁ!!!タイミングが悪い!!お前なんか従6位に降格の上一生そこで差し止めだぁ!!」

早良「あかん・・・・そろそろやめんと兄さんがおかしゅうなる・・・・兄さん、わかったさかい兄さん!」

百川「いきなり何なんだ!さては良継兄さん、あんたが嗾けたな?」

良継「人聞きが悪いよ百川。俺は何もしてない。そう、俺の周りはいつも平和だ」

百川「何言ってんだ流罪経験者が」

良継「あれも一度くらいやってみるといいよー。都の生活を離れて、呑気に釣り三昧も悪くない。・・・俺、隠居したら伊豆に住もうかな」

安殿「叔父上、ちょっとからかいすぎですよ。式家が3人も出てきちゃったじゃないですか」

早良「ははは。分かっとるよ。ほらほら兄さん、落ち着きはって」

「元凶はお前だろ――――――――ッ!!!」

藤原 『山部親王、ご乱心ナウ』

 

桓武「お前らしばらく謹慎してろこれは勅令だ――――ッ!!!!」

 

 

えんど。

 

 

 

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