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夢で迄貴方は、私を

​先代首領×若クイーン。先代がクイーンにタトゥー入れてるだけの話ですが何となくいかがわしいのでr-15と書いておきました。

​仲間想いで人間不信なクイーンが何故眠らない生活をおくるのか。

「ああっ、ボス、やっ・・・だめ、です、そんな・・・ぁ・・・ッ!!」

 手首を寝台に固定された私は、髪を乱して懇願する。下半身、立てた膝は割られいて、その間でボス――コードネームはジョヴァンニと言った――が、私の名を呼んで低く笑った。クイーンではなく、「―――」と。まるで、恋人に意地悪く囁きかけるかのように。

「何だ、悲鳴でも上げるつもりか?そんなことしてもいいけど、多分誰も来ないぜ」

 ここの部屋、防音だかんな。射るように私を見据えて、ジョヴァンニは枕元に手を伸ばす。細い針と、赤のインクとブランデー。蓋を開けてアルコールに針の先を浸し、更に脚を押し広げられる。

「っ・・・・!」

「おーおー、相変わらず真っ白だなァ。ま、南ドイツの人間は皆こうだとは言うが・・・・赤の薔薇がよく映えるだろうよ」

「ほ・・・本気、なのですか・・・っ」

「鬱陶しい奴は嫌いだぜ、クイーン。俺が冗談を言ってるように見えるか」

 針を横に咥え、ジョヴァンニが私の内腿を撫で上げる。思わず背筋が反った。知っている。普段はおちゃらけていても、こういう場面で決して冗談などを言う方ではない。だからこそ、尚更私は震える。恐怖と焦りがない交ぜになって、もう頭がおかしくなりそうだ。

「いくら夜が長いっつっても時間は勿体ねぇからな、そろそろ始めさせてもらうぜ」

「待って、ボス、まって・・!!」

「痕を残してもすぐ消えちまうからなァ、こうすればお前だって、ずっと俺のことを忘れられないだろう」

「忘れ、るなんて、そんな、ちがっ」

「お前が忘れなかったとしても周りは分かんねぇだろ」

「や、やだ、止めて、ぼす、や、めて―――!!」

 叫び、虚しく。精一杯の抵抗を容易く押さえつけられ、左足を丁度内腿が露わになるように、固定された。

 ジョヴァンニの蒼い瞳が、熱を孕んでギラリと煌めく。涙で滲んだ視界の端で、針が躍った。

 

 

「諦めろ、クイーン。いや、“―――――”。 ・・・お前は俺のモンだ。四つで俺に拾われたあの日から、な」

 

 

 ぷつり、と刺す痛みが走る。刹那、度数の高いアルコールが、傷を灼いた。

 

 

 

「あ、ああ、あああ嫌ァ―――――――ッ!!!」

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「・・・・・・ッ!!!!」

 

 跳ね起きると、そこはかつての薄暗いアジトではなく、いつもの殺風景な寝室だった。生々しすぎる夢。呼吸は乱れ、胸が苦しい。挙句の果てに涙まで出ているものだから、いい年して何をやっているんだと、却って呆れたくなった。

 時刻は午前4時半を回ったところ。意識が途切れる寸前に時計を見た時は丁度4時を刺していたから、30分近くも寝ていたことになる。自発的に眠くなるなんてあまりにも珍しかったから。眠れるんじゃないかと思って、おとなしくベッドに潜ってみたのだ。だがしかし。

「やはり・・・無理なのだろうな」

 あんな夢を見るだなんて。懐かしいといえば懐かしい、呪いのような夢。だがあれは紛れもない事実、証拠に私の身体の何か所かには、ハンターを除いては誰も知らないが、未だに小さな薔薇のタトゥーが残っている。それこそキスマーク程度の大きさでしかない代物な訳だが、依然として私がそれに縛り付けられているのも確か。もしかして結果的に“ああなる”という将来を前首領――ジョヴァンニは予測したうえで私の身体にタトゥーを彫り込んだのかもしれないな、などと小さな赤い薔薇を見るたびに思うが、仮にそれが本当だったんだとしたら、・・・まぁ、間違いなく今度こそ私は発狂するのだろう。

  死して尚私を毒するあの方の執念。それを独占欲だなんて言えるほど私とあの方の間に感情があったのかといえばそれは甚だ疑問だが、感情がなければあんな愚かしい衝動に身を委ねる事も無かったのか、と思えば、もう遥か昔のことながら、やはりあの事をきっかけに私は戻れない道に足を踏み入れてしまったのだな、と呆然と思う。だから何だと言われればそれまでだし、そこに感傷を覚える訳もないのだが、――――あの方は、私を何時まで経っても離しては、くれない。

 夢で迄尚、貴方は私を。

 死して迄尚。

 

 

「・・・私を、捕らえるのか」

 

 

 

 

 

 テラス越し、空が明け方への準備を始めようとしていた。

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