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滑稽な傀儡の闇夜

モブ×クラウス。まだ恋人がいない状態でのマゾヒスト根性前回なR18回です。

​その後優しい恋人さんが出来ましたが、マゾヒスト根性は相変わらずなようです。

​自己責任でどうぞ。

「あっ、は、ぁ、っああ――――・・・ッ、あ、やぁん・・・・っ」

 

 安い宿屋のベッドの上で。絶頂を迎える前で寸止めされた私は、思わず情けない声を漏らした。だって私を責め立てていた太い砲身が、いきなり引き抜かれたんだもの。達しそうなのに寸前で打ち止め。もうこれを5回は繰り返されていて、私は気が狂ってしまいそうだった。―――もう狂っているじゃないか、とそういう突っ込みはよしてくれ。

 今日は久々に大仕事だったのだ。だが、組んだ相手が悪かった。よりによって死体損壊の第一人者であるヨハンで―――あんな優しげな顔をしておいて、同業者でさえ目を背けたくなるような殺し方を平気でする男なのだ。ああそうさ。私もとばっちり。人数が多かったのも重なって、全身に血を浴びた。そのせいで。何だか血の匂いにあてられて、色々と収拾がつかなくなって。報告がてら詰所に戻り、ちょうどそこにいたこの気前のいい同僚を誘ってホテルに連れ込まれたのはかれこれ4時間は前のこと。部屋に入ったなりベッドにもつれ込んで、そこから休憩なしで私たちは交わり続けている。

 

「あ・・・・ッ、もう、なんで、ぬく、の・・・」

 

 途切れ途切れにそう問うと、低く喉で笑った同僚が再び、私の中に押し入ってきた。私と違って195㎝95㎏と同業者の中でも相当タッパのある方だから、当然ソレも、大きい。まるで無理やり押し広げられているようなこの感覚――しかも、ラテン系国家出身とだけあって友人としてもなかなか頼れる男で、しかも後腐れがない。ということでこういう風に私が少しおかしくなってしまった日、私は彼を誘い、彼は私を求め、合意の上でまるで強姦のようなセックスをする。今日のこれも、いつも通りのものだった。

 強姦のような、というと少し語弊があるかもしれない。SMチックとでも言ったらいいのだろうか。現に今私は、ベッドの柵に両手首を縛り付けられており、かつ後背位で腰だけを高くひっつかまれている状態で、挙句フェラチオどころか半ばイマラチオのようなこともさせられ、口の周りは彼の体液でべたべたである。・・・これらもちろん、合意の上。乱暴にして、という私の願いを聞き入れてくれた彼がやってくれていることである。とはいっても、彼自身結構それが楽しいようで、「私のほうが請い願ってしてもらっている」という風にはなっていない。そこらへんの空気を読む力がずば抜けてるのが彼の長所なのだが―――流石に、一発目から口の中に出されて飲み下すことを強要された時は、本気で涙目になった。

 

「そう簡単にイかせてたまるかよ」

「あ・・・ッ、ばか、ぁ・・・ッ、ひ、っ、う、あ、あ」

 

 普段からセックスは割とスポーツ感覚、と言っていた気がするが、これは少し特別なのだろう。また中で大きくなった凶器で、私は貫かれ、押し入られ、抉られる。筋肉質な彼の腕が私の腰を掴み、壊れるんじゃないかというほど強く、叩きつけてくる。

 

「なぁ、最近珍しいほどご無沙汰だったじゃねーか。どうした、ようやくお前にも春が来たか」

「あっ、あっ、んな、訳、なっ、ああ・・・ッ!!」

「やたら嬉しそうだったの、俺でも分かったぜ。あとたまに朝別のにおいしてる時あったし。よかったじゃねぇか」

「あ、言うな、っ、ん、あ」

 

 こういうことを素直に喜んでくれるような男なのだが、まぁ。枕に顔を押し付け声を殺していたら、髪を鷲掴みにされ無理やり顔を上げさせられた。無茶な姿勢と痛みで悲鳴のような声が漏れる。しかもその隙にさらに奥まで突いてきたものだから、もう堪らない。

 

「あぁ、んッ!!」

 

 目の前で火花が散った。仰け反りながら私は高く放り出される。少しこれで達してしまったかもしれないなと思ったが、そんなことはもう何もわからない。もっと決定的な、痺れる様な、そんな快楽が欲しい。縛り付けられた手首の交差の上で息を絶やしながら、ふと私は、視界の端に光る銀色の刃を見つけた。

 ぞくり、と背が震える。あんなこと、してもいいんだろうか。したら、どうなるんだろう。

 被虐心が加速して、口をついた。

 

「ねぇ、ナイフ・・・私の背中、斬り付けて」

「は?・・・・あ、そういうことか?でも多分傷が・・・」

「だい、じょうぶ、テオドールが、いるから・・・」

「・・・・。分かった、いいぜ。それは俺もやったことねぇからな、興奮するわ」

 

 彼が、ぐっと体を捩じってベッドサイドのナイフを取る。毒を仕込む用ではないからせいぜい誰かの血がついているくらいだろう。動いた拍子に中の彼の物も動いて、甘い声がこぼれた。

 んじゃあ、と今度は下腹に左手を添えられる。右手にはナイフだ。立ち上がっている私の物に、彼の手が触れる。びっしょびしょだ、と欲に濡れた声でそう呟く彼の声に、また背筋が粟立った。

 彼が律動を再開する。内臓まで侵されているような感覚に、意識を飛ばしそうになる。徐々に早まっていく動き、止まりだす思考。やがて喘ぎ声を抑えられなくなった私が息苦しいほどの快楽に溺れ始めた頃、唐突に、背中を鋭い痛みが走り抜けた。

 予想、以上だ。

 

「あぁ―――・・・ッ!!!」

 

 焼けつくような、それでいて歯がゆいような痛み。結構広範囲を切ったらしいが、それどころではない。思わず達してしまった。ああ、血が流れてる。枕に額をうずめた隙間から見える、脇腹から滴る血。白いシーツにぽたぽたと垂れ、だが彼は腰の動きもやめない。

 

「はっ、すっげ、締まるぜクラウス。やっばいな、癖になっちまいそうだ」

「はっ、あ、ああ、んあ、や、あ、ああッ!!」

「もういっちょ、いってみるか」

 

 文字通り、死にそうなほどの快楽が私を襲う。もう快楽という言葉ですら生ぬるい、この感覚。予告通りもう一度、背に熱が走る。もう何も出ていないのに、私は達していた。

 壊れてる。ああ、そうさ。私は壊れている。だがそんなのは昔から。今更どうこうなる話でもない。ならば、せいぜい楽しむまでだ。この壊れた心を。壊れた思考を。

 所詮最初から壊れている私の世界に、昼も夜も幸も不幸も、善や悪でさえあったものではないのだから。

 

「あ、あぁ、ん、だめ、あ、わた、し、あああ―――ッ!!!!!」

 

 喉が裂けるかと思うような声。私は気をやり、彼もまた、幾度目か分からないが私の中で精を放った。正直、腹がもう苦しい。だがまだまだ、足りない。もっと、とねだるように残りの力で少し中を締めると、後ろから彼の苦笑が聞こえた気がした。

 

「ああ、わかってるさ。大丈夫、一晩中付き合ってやるよ」

 

 こういうところ、好きだ。駆け引きで相手を転がすのも楽しいが、ひたすらに屈服させられるこの感覚も、たまらない。

 

 狂った世界で、私は喘ぎ続ける。血に濡れた髪、肌を薄暗い闇夜に溶け込ませて。そして時々脳裏に浮かぶあの人の顔を捉えては、今度はそちらを訪ねてみようか、などと考えるのであった。

 

 

Fin.

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